61次南極観測隊「南極トッテン氷河沖集中観測」
eXpendable式海洋観測装置
概要
日本の南極観測は、計画的かつ効率的に事業を進めるため中期目標・中期計画のもとで運営されています。現在は、南極地域観測第Ⅸ期6か年計画に基づいて様々な観測が行われています。観測プラットフォームとして有名なのが、南極観測船「しらせ」です。この「しらせ」の南極観測活動においてeXpendable式海洋観測装置(XCTD/AXCTD)が利用されています。
プロジェクト
南極トッテン氷河融解プロセスの解明を目指す。61次南極観測隊「トッテン氷河沖集中観測」
今後、気候変動によって暖かい海水がさらに暖かくなった場合、氷河の融解が加速することは避けられません。南極トッテン氷河流域の氷がすべて融けると約4メートルの海面上昇が予測されています。また、トッテン氷河の末端部分は海に突き出しており、その下に流れ込んでいる“暖かい海水”が氷河を融かしていることがわかっています。ただ、暖かい海水の流入経路やその量・季節変化・経年変化などはまだ良く分かっていません。2020年61次南極観測隊では、南極トッテン氷河沖の集中観測(通称:トッテン祭り)を世界で初めて行いました。南極は、日本の37倍と広大な地域です。周辺は海氷が厚くて船舶での接近ができない地域があります。広域調査かつ厳しい環境下で効率的に海中の状況を計測できる観測システムが求められました。

トッテン氷河末端の位置。青い線は、南極観測船「しらせ」の航跡。©国立極地研究所
船舶・航空機を航行させながら利用できる海洋観測装置
トッテン氷河沖の集中観測では、航走中の「しらせ」から海中にXCTDプローブ(eXpendable Conductivity Temperature Depth profiler)を投下し、水温・塩分の鉛直分布計測が行われました。また、広域且つ船舶で調査が困難な地域では、「しらせ」に搭載されているヘリコプターを用いて空中からXCTDプローブを投下できるAirborneXCTD(AXCTD)が利用されました。トッテン氷河の沖の暖かい海水の流入経路や季節・経年変化を把握するためのデータ取得に活用されています。

「しらせ」船舶からのXCTD観測シーン ©国立極地研究所

「しらせ」ヘリクルーのAXCTD投下シーン ©国立極地研究所

丸や菱形で囲まれた数字が観測ポイントの候補地 ©国立極地研究所
第61次・62次南極地域観測隊の活動報告
国立極地研究所の観測隊ブログでは、普段知ることができない貴重な情報や活動報告が公開されています。今年も無事隊員の皆さんは日本に帰ってきており、第61次南極地域観測隊の越冬期間(2020年2月~2021年1月)、第62次南極地域観測隊の夏期間(2020年11月~2021年2月)で実施された活動成果報告が観測隊ブログで公開されています。
関連リンク
- 南極みらいビジョン2034|国立極地研究所(外部サイト)
- 日本の南極観測について|国立極地研究所 南極観測特設サイト(外部サイト)
- 61次南極観測隊トッテン氷河沖での集中観測を開始!|観測隊ブログ(外部サイト)