新機能を搭載したDDVCウインチ 2018.06.11
新型DDVCウインチ
従来より、多方面から電動油圧式ウインチの省電力化、静音化、配管レス化、インテリジェンス化の点で高い評価を頂いているDDVC ウインチに、新機能が追加されました。※DDVCウインチは、三井造船株式会社・第一電気株式会社・鶴見精機で共同開発したウインチシステムです。
船の電源設備へエネルギーを戻す「高力率電力回生機能」を装備
電動ウインチは、繰出動作時にモータが「発電機」となり連続的に回生電力が発生します。従来は回生によって発生していた電気エネルギーを大型抵抗器で消費させ、熱に変換して捨てる処理を行っていました。鶴見精機の新しいDDVCウインチでは、高力率電力回生を可能とする高機能インバータをモータ制御に採用することで、発生した回生電力を三相交流の給電線を通じて船の電源設備側に戻し※1エネルギーとして再利用することを可能としました。
回生電力は、高力率回生機能によって船から給電される交流電源と完全な正弦波同期をとって行われます。このため電源電圧波形に大きな歪みを生じさせることなく※2電気エネルギーの回収と再利用を可能とします。電力回生機能の実現により、ウインチの制御盤を収める船室の除熱能力も低く抑えることが可能となります。省エネ化だけでなく船体の空調/排熱設計の面でも大きく寄与します。
※1 船の電源設備へ電力回生をすることの可否については、本ウインチシステムの導入前に、船の機関の責任者様にご確認ください。
※2 高力率回生による高調波抑制の効果は、経済産業省発行の「特定需要家 高調波抑制対策ガイドライン」において自励三相ブリッジに相当する等価容量の換算係数 K5=0 を満足することで示されます。本仕様は、搭載しているモータドライブ素子(インバータ)のメーカがカタログ上で保証している内容に準拠します。
AHC 制御に垂直ヒーブ対応機能と、船体の「動揺予測制御アルゴリズム」を実装
鶴見精機のDDVCウインチは、運用中に船の動揺(Roll / Pitch)を検知して、ケーブル先端の水中機器が船の動揺の影響を受け上下に揺さぶられてしまう動きをキャンセルするよう、ウインチドラムの回転を制御する動揺補償機能(AHC: Active Heave Compensation)が付加されています。本機能は従来の DDVC ウインチにも装備されていましたが、今回、動揺成分として船の動揺(Roll / Pitch)だけでなく、船体の垂直方向のヒーブ量にも対応できる機能を追加しました。
一定速度での上昇下降や、一定深度を保持した状態での定点観測を実現
垂直ヒーブ成分を含めた動揺補償の高精度な演算を可能とするため、船体の動揺検知に AR モデルの理論に基づいた予測制御のアルゴリズムを採用し、センシングの遅れ要素を最小限に抑えた新しいAHC機能を実現しています。本機能を実装したDDVCウインチを使用することで、船の動揺による影響を低減した形で観測器材を海中に投入することができます。